リーガルテックサービスが多く誕生しており、導入を検討している企業も少なくないでしょう。
しかし、一口に「リーガルテック」といっても、そのサービス内容はさまざまです。
リーガルテックには、どのような種類があるのでしょうか?
また、企業がリーガルテックを導入することには、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
今回は、リーガルテックの概要や種類、導入のメリットなどについて、弁護士がくわしく解説します。
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リーガルテックとは
リーガルテックは、法律を意味する「Legal(リーガル)」と、技術を意味する「Technology(テクノロジー)」を合わせたことばです。
つまり、リーガルテックとは、法律課題の解決をサポートするITサービスのことです。
「リーガルテック」はあくまでも法律に関するITサービスの総称であり、各サービスによって具体的なサポート内容が異なります。
企業がリーガルテックの導入を検討する際は、自社の課題を確認したうえで、その課題の解決に資するリーガルテックサービスを選定するとよいでしょう。
リーガルテックの市場規模
リーガルテック市場は年々成長傾向にあります。
自主調査や受託調査などを行っている株式会社矢野経済研究所によると、リーガルテックサービスのうち電子契約サービスの2021年における市場規模は、前年比38.6%増の140億円であったとのことです。※1
また、2025年には95億円に達する見通しとされています。
リーガルテック市場は今後も当面は成長すると考えられ、今後もますます便利なサービスが登場することでしょう。
リーガルテックの主な種類
リーガルテックには、どのような種類があるのでしょうか?
ここでは、主なリーガルテックサービスを10種類に分けて解説します。
電子契約サービス
リーガルテックサービスの代表的なものには電子契約サービスがあります。
電子契約サービスとは、従来は書面で交わしていた契約を、クラウド上で交わすサービスです。
クラウド上で契約書を確認できるのみならず、電子署名やタイムスタンプなどの技術によって法的な有効性が担保されます。
クラウド上で契約を交わすことで文書の管理や検索が容易となるほか、契約締結にかかる日数を削減できる効果を期待できます。
契約書にかかる印紙税を節約できる点もメリットです。
印紙税とは契約書など一定の文書にかかる税金のことです。
書面で一定の契約書を交わした場合、数百円から数万円程度の印紙を貼付しなければなりません。
一方、電子契約の場合は、この印紙税の対象外とされています。
契約書レビューサービス
2つ目は、契約書レビューサービスです。
契約書レビューサービスとは、システム上に契約書の原案をアップロードすることで、AIが自動的に契約書のチェックを行ってくれるサービスです。
契約書案に漏れなどの問題点があればこれを指摘してくれるほか、修正案を提示してくれます。
契約書レビューは法務部員にとって負担の大きな業務の一つであり、リーガルテックの導入により負担が軽減しやすくなるでしょう。
しかし、すべての契約書に対応しているわけではなくイレギュラーな契約への対応は困難であるうえ、レビュー内容に問題があったとしても原則として自社の責任となることには注意が必要です。
文書管理サービス
3つ目は、文書管理サービスです。
文書管理サービスとは、契約書や請求書などの書類をデータ化し、保存するリーガルテックサービスです。
紙での保管が必要なくなり省スペース化につながるほか、書類の紛失を避けやすくなります。
また、書類の検索がしやすいことも大きなメリットでしょう。
一方で、書面での保管が必要なものまで電子化して廃棄してしなわないよう、書類ごとの慎重な判断が必要です。
資料検索サービス
4つ目は、資料検索サービスです。
資料検索サービスとは法律の専門書や過去の判例などから、情報を検索できるサービスです。
書籍とは異なり検索が容易であることから、法令や判例のリサーチに要する時間を短縮しやすくなります。
申請書類作成サービス
5つ目は、申請書類作成サービスです。
申請書類作成サービスとは、登記申請や商標申請、許認可申請などの申請書類の作成や申請手続きが行えるサービスです。
定期的に手続きが必要となる定型的な申請であれば、リーガルテックを活用することにより自社で申請しやすくなるでしょう。
ただし、非定型なものや事前調査などが必要な申請は、引き続き専門家によるサポートが必要となる場面が多いといえます。
また、すべての申請手続きに対応しているわけではありません。
弁護士検索サービス
6つ目は、弁護士検索サービスです。
弁護士検索サービスとは、希望する分野に対応できる弁護士を検索できるウェブサービスです。
弁護士検索サービスを活用することで、その分野にくわしい弁護士を見つけやすくなります。
ただし、検索対象となるのは原則としてそのサービスに登録を受けた弁護士だけであり、すべての弁護士を横断的に探せるわけではありません。
フォレンジックサービス
7つ目は、フォレンジックサービスです。
フォレンジックは「法廷の」や「法律的に有効な」という意味を指すことばです。
そして、フォレンジック調査とは、ハードディスクやUSBメモリなどを解析し、法律的に有効な証拠を探すことを指します。
フォレンジックサービスを活用することで、このフォレンジック調査を効率的に進めやすくなります。
また、サービスの中には、ハードディスクから削除されたデータを復元できるものもあります。
eディスカバリサービス
8つ目は、eディスカバリサービスです。
eディスカバリとは米国民事訴訟の手続きであり、「電子証拠開示制度」と訳されます。
リーガルテックのなかには、このeディスカバリに対応するものもあり、活用することで電子データのスムーズな収集や分析をしやすくなります。
紛争・訴訟支援サービス
9つ目は、紛争・訴訟支援サービスです。
紛争・訴訟支援サービスとは訴訟への対応や解決支援を行うサービスです。
裁判所などへの提出書面の作成支援のほか、本人訴訟支援サービスなど、さまざまな面から紛争や訴訟を支援するものが誕生しています。
法律事務所向けサービス
最後は、法律事務所向けのリーガルテックサービスです。
案件管理や進捗状況管理、顧客情報管理、書類作成など、多くのサービスが開発されています。
企業がリーガルテックを導入するメリット
企業がリーガルテックを活用することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、リーガルテックの中でも比較的よく活用されている契約書レビューサービスや電子契約サービスを念頭に置き、主なメリットを紹介します。
業務効率化につながる
企業がリーガルテックを活用することで、業務効率化につながりやすくなります。
中でも、契約書のレビューに多くの労力を割いている法務担当者は少なくないでしょう。
リーガルテックサービスを活用すれば、基本的な事項についてはAIがチェックしてくれるため、法務担当者の業務を効率化しやすくなります。
契約書チェックは複数担当者が重ねてチェックする体制をとっていることも多く、リーガルテックを活用することで初回チェックをAIに委ねるなどさまざまな活用法が検討できます。
品質の均一化が可能となる
企業がリーガルテックを活用することで、品質の均一化が可能となります。
契約書レビューなどの品質は、個々の法務担当者の能力に左右されることが少なくありませんでした。
一方で、リーガルテックでは機械的にチェックを行うため、品質の均一化が可能です。
リーガルテックを導入することで、たとえ急に法務担当者が交代する事態となっても、これに伴って急激にレビュー品質が低下する事態を避けやすくなるでしょう。
リモートワークに対応しやすい
新型コロナの終息後も、一定範囲でリモートワークを続けている企業も多いようです。
リーガルテックはリモートワークとの相性がよく、契約書レビューや押印だけのために出社する必要がなくなります。
また、文書管理サービスなどと併せて活用することで、出社せずとも業務を遂行しやすくなるでしょう。
企業がリーガルテックを導入するデメリット・注意点
企業がリーガルテックを導入することには、デメリットや注意点もあります。
最後に、契約書レビューサービスや電子契約サービスを中心に、企業がリーガルテックを導入する主なデメリットと注意点を4つ解説します。
なお、リーガルテックはあくまでも「手段」であり、導入事態が「目的」とはなり得ません。
導入を検討する際は現状の課題を把握したうえで、「リーガルテックを使って行いたいこと」を明確にすることをおすすめします。
出力結果が必ずしも正しいとは限らない
1つ目は、出力結果が必ずしも正しいとは限らないことです。
たとえば、契約書レビューサービスにおいて、誤った修正案が出力される可能性はゼロではありません。
また、修正すべき点が見落とされることもあるでしょう。
しかし、リーガルテックはあくまでも「ツール」です。
仮に誤ったレビューの結果自社に損害が生じても、責任をとってくれるわけではありません。
そのため、リーガルテックを活用する場合であっても、最終的なチェックは引き続き必要となります。
また、リーガルテックの導入により法務担当者が基本的な契約書レビューをする機会が減ることは、短期的には望ましいことでしょう。
一方で、これは新たに法務業務を担う人員が、基本的な契約書レビューに触れるチャンスを逃すことをも意味します。
その結果、リーガルテックによる出力の問題点に気付ける人材が、将来的に社内にいなくなってしまうおそれが生じます。
そのため、リーガルテックを導入する場合は、今後の従業員教育にも注意を払わなければなりません。
すべての案件に対応しているわけではない
2つ目は、リーガルテックがすべての案件に対応しているわけではないことです。
契約書レビューなどの対象となるのは、ある程度定型的な契約類型に限られます。
特殊な契約や、複数の内容を一つにまとめた契約などでは、対応していないこともあります。
その場合は、従来どおり自社で契約書レビューをしなければなりません。
また、事業用定期借地権の設定契約のように、公正証書とすべき契約類型も存在します。
このような契約では電子契約で完結させることはできず、公証役場の関与が必要です。
取引先が対応していないことがある
3つ目は、取引先が対応していない場合があることです。
電子契約を活用するには、相手方も電子契約に対応していなければなりません。
自社だけが導入しても相手方が導入していなければ活用できないため注意が必要です。
トラブル発生時は弁護士へ相談する必要がある
4つ目は、トラブル発生時には弁護士へ相談する必要があることです。
リーガルテックはいずれも「ツール」であり、実際の紛争について解決のアドバイスをくれたり、相手方と交渉したりすることはありません。
そのため、実際にトラブルが発生した際は、従来どおり弁護士へ相談する必要が生じます。
トラブル発生時における弁護士へのスムーズな相談を希望する場合は、信頼できる弁護士との顧問契約締結も検討するとよいでしょう。
まとめ
リーガルテックの概要やリーガルテックの種類を紹介するとともに、企業がリーガルテックを活用するメリットやデメリットを解説しました。
リーガルテック市場は拡大傾向にあり、便利なサービスが多く誕生しています。
リーガルテックをうまく取り入れることで、業務効率化や業務品質の均一化を図りやすくなるでしょう。
一方で、リーガルテックはあくまでもツールであることや、トラブル発生時の対応などまでは任せられないことに注意が必要です。
リーガルテックの導入そのものを目的とするのではなく、リーガルテックを使って解決したい自社の課題を見定めたうえで導入を検討することをおすすめします。
法務部門の運営でお困りの際や契約書レビューの精度を高めたい際などには、リーガルテックの導入のほか、弁護士への外注も選択肢の一つです。
Authense法律事務所は企業法務に特化したチームを編成しており、契約書レビューや紛争対応など、企業の法的課題についてトータルサポートが可能です。
リーガルテックの導入や弁護士への外注などでお悩みの際には、Authense法律事務所まで、まずはお気軽にご相談ください。
状況やご希望の業務内容などに合わせて、最適なサポートプランをご提案します。